被災地から:震災2年半 閖上再建、理解へ努力 佐々木一十郎・名取市長 /宮城
毎日新聞 2013年11月14日 地方版
−−閖上をどういう街に復興させるのか。
◆仙台湾岸のほとんどが内陸移転を選択する中ではあるが、海辺に安全を確保した市街地を形成したい。閖上に住んでいれば、海辺の良さはよく分かる。価値評価は人によるが、貞山運河あり、名取川ありという景観、気候、自然環境の価値を認識する人は(現地再建の)選択を評価してくれる。
−−将来的な発展を見込んで70ヘクタールのかさ上げを計画したが、居住人口が足りず、国には認められなかった。
◆(居住人口は)事業認可のハードルとして、どこの街にも共通して課される条件だ。認められなかったのは仕方がない。
−−市長は基礎自治体に事業認可の権限がないことを課題に挙げていた。できれば将来の発展が見込めるだけの規模を持つ街をつくりたい思いがあったのでは。
◆希望はあるが、公費で行う事業なので、どの街も過剰な計画を立てて使い放題ということになると収拾がつかない。役人が物差しを持ってきて規制するのは仕方ない。大きな政治判断をしない限り、それを止めることはできない。
−−かさ上げ範囲の縮小で、当初計画の人口5500人規模の街をつくるのは難しくなった。
◆内陸移転をすれば32ヘクタールはさらに小さくなり、農村部の中にミニタウンをつくることになる。そこには商店が一軒もない。大家族の農家ならば助け合って暮らせるが、(都市部出身の)被災者が生活できるだろうか。そうした場所で将来的にも住みやすい街を提供できるだろうか。北海道の奥尻島は(1993年の)津波で高台移転したが、住民は『不便なところには住めない』と戻ってきた。不便なところで生活して(移転した被災者が)満足できるか。
1万人規模でコンパクトな街であれば、将来も持続可能な街をつくることができた。限界以下の規模の街をつくらざるを得なくなったが、その中で工夫、努力をしていきたい。閖上が危険なら私は「戻ろう」とは言わない。【聞き手・金森崇之】
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