内陸移転意見書不採択 建議で被災者配慮求める 名取・閖上
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宮城県都市計画審議会(会長・森杉寿芳日大教授)は31日、東日本大震災で被災した宮城名取市閖上地区の土地区画整理事業の計画修正を求める意見書を議題とした3度目の審議を県庁で行った。内陸の移転先確保を求める意見書は不採択としつつ、住民の合意形成や移転先整備の努力など、被災者感情への最大限の配慮を求める建議と付帯意見を付けることを決めた。
建議は審議会から市に直接意見を述べる制度で、県内での発動は初めて。付帯意見とともに法的強制力はないが「審議会の意思を明確に示せる」(県都市計画課)。現地再建を不安視する声に理解を示しながらも、採択による影響の大きさを懸念し「折衷案」を選択した格好だ。
閖上の土地区画整理事業に関して市民から提出された意見書は16件で、うち1件には約450人分の署名が添付された。その多くが現地再建を図る事業区域より西側を求める内容だった。
この日は冒頭、閖上の住民から村井嘉浩知事、佐々木一十郎市長らに早期の事業化を望む1721人の署名を添えた要望書が出されたことが事務局から報告された。
委員からは「被災者感情を最優先すべきだ」「内陸移転をかなえる担保がない」などと意見書採択を主張する声が上がった。採択の場合は県が市に計画の修正命令を出すことになり、「計画に与えるダメージが大きい」と不採択を主張する意見も出た。
採決の結果、委員長と欠席者を除く18委員中、採択に賛成が7、反対が11で不採択が決まった。
森杉会長は「今後は徹底した民意調達を実行してもらいたい」と強調。佐々木市長は「建議や付帯意見がどんな内容かを踏まえて取り組む。一日も早い復興を願う被災者の思いに応えるよう努力したい」と話した。
市は近く県に事業認可を申請し、順調に進めば11月中に事業認可される。審議会の継続審議で第7次復興交付金の申請が間に合わなかったため、復興計画は予定より約3カ月遅れる見通しだ。
◎足りぬ合意形成、正念場これから
【解説】名取市閖上地区の土地区画整理事業で、県都市計画審議会がようやく結論を出した。計画修正を求める意見書、事業推進を願う要望書の双方が入り乱れる光景は、市の合意形成の不十分さを浮き彫りにした。
閖上の復興計画は曲折をたどった。現地再建の方針は、学識経験者や地元委員による「新たな未来会議」の提言を基に2011年秋に決定した。しかし、市が住民に直接説明したのは翌春だった。住民は反発し、個別面談でも計画との意識差が顕著になった。
住民の意向調査が先に行われれば、展開は大きく変わった可能性がある。市は2度にわたって現地再建規模を縮小させたが、内陸の移転先は増やさず、住民に「結論ありき」の印象を与えた。
閖上の人口約5700のうち、津波で約750人が犠牲になった。被害の甚大さを思えば、たとえ多重防御策を示されようと、二度と戻りたくないという被災者がいるのは無理からぬことだ
「閖上のまちをなくすわけにはいかない」と佐々木一十郎市長は言う。まちの将来像を俯瞰(ふかん)して判断する重要性は理解できる。ただ、それには個々の被災者の心情を酌む微妙なかじ取りが必要だった。
現地再建を願う住民にとっても、事業の遅れは閖上の将来に大きな不安を抱かせた。時間の経過に不信感と諦めを抱き、復興を待ちきれず転出を決めた住民もいる。
事業認可の見通しは立ったが、建議と付帯意見の重みを市はしっかり受け止め、形にしなければならない。正念場はむしろこれからと言える。(岩沼支局・成田浩二)
建議は審議会から市に直接意見を述べる制度で、県内での発動は初めて。付帯意見とともに法的強制力はないが「審議会の意思を明確に示せる」(県都市計画課)。現地再建を不安視する声に理解を示しながらも、採択による影響の大きさを懸念し「折衷案」を選択した格好だ。
閖上の土地区画整理事業に関して市民から提出された意見書は16件で、うち1件には約450人分の署名が添付された。その多くが現地再建を図る事業区域より西側を求める内容だった。
この日は冒頭、閖上の住民から村井嘉浩知事、佐々木一十郎市長らに早期の事業化を望む1721人の署名を添えた要望書が出されたことが事務局から報告された。
委員からは「被災者感情を最優先すべきだ」「内陸移転をかなえる担保がない」などと意見書採択を主張する声が上がった。採択の場合は県が市に計画の修正命令を出すことになり、「計画に与えるダメージが大きい」と不採択を主張する意見も出た。
採決の結果、委員長と欠席者を除く18委員中、採択に賛成が7、反対が11で不採択が決まった。
森杉会長は「今後は徹底した民意調達を実行してもらいたい」と強調。佐々木市長は「建議や付帯意見がどんな内容かを踏まえて取り組む。一日も早い復興を願う被災者の思いに応えるよう努力したい」と話した。
市は近く県に事業認可を申請し、順調に進めば11月中に事業認可される。審議会の継続審議で第7次復興交付金の申請が間に合わなかったため、復興計画は予定より約3カ月遅れる見通しだ。
◎足りぬ合意形成、正念場これから
【解説】名取市閖上地区の土地区画整理事業で、県都市計画審議会がようやく結論を出した。計画修正を求める意見書、事業推進を願う要望書の双方が入り乱れる光景は、市の合意形成の不十分さを浮き彫りにした。
閖上の復興計画は曲折をたどった。現地再建の方針は、学識経験者や地元委員による「新たな未来会議」の提言を基に2011年秋に決定した。しかし、市が住民に直接説明したのは翌春だった。住民は反発し、個別面談でも計画との意識差が顕著になった。
住民の意向調査が先に行われれば、展開は大きく変わった可能性がある。市は2度にわたって現地再建規模を縮小させたが、内陸の移転先は増やさず、住民に「結論ありき」の印象を与えた。
閖上の人口約5700のうち、津波で約750人が犠牲になった。被害の甚大さを思えば、たとえ多重防御策を示されようと、二度と戻りたくないという被災者がいるのは無理からぬことだ
「閖上のまちをなくすわけにはいかない」と佐々木一十郎市長は言う。まちの将来像を俯瞰(ふかん)して判断する重要性は理解できる。ただ、それには個々の被災者の心情を酌む微妙なかじ取りが必要だった。
現地再建を願う住民にとっても、事業の遅れは閖上の将来に大きな不安を抱かせた。時間の経過に不信感と諦めを抱き、復興を待ちきれず転出を決めた住民もいる。
事業認可の見通しは立ったが、建議と付帯意見の重みを市はしっかり受け止め、形にしなければならない。正念場はむしろこれからと言える。(岩沼支局・成田浩二)
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